2013-03-29

パトリック・クェンティン「人形パズル」


時は第二次大戦中、海軍将校となっていたピーター・ダルースはつかの間の休暇を利用して、妻のアイリスとサンフランシスコで落ち合う。ふたりにとっては不案内な土地であったが、不思議な幸運によってホテルの部屋を取ることが出来た。だが、サウナで将校の制服を盗み取られてから、ピーターは犯罪の罠へと引きずり込まれていくのであった。

パズルシリーズの三作目は巻き込まれ型サスペンスといったところ。ピーターが事態を解決しようともがけばもがくほど、状況はどんどん悪くなっていきます。
また、ピーターの窮状を見かねて味方になってくれる探偵が登場。落ち着いていて、いかにもタフであり頼れそうな男ではあるのだが、フィクションの中の私立探偵のパロディのような趣があって、この作品世界の中ではちょっとユーモラスな存在です。

いわゆる名探偵役がいないためか、謎の多くは展開につれて偶然のようにして解けていきます。やろうと思えばもっと錯綜させることができたはずですが、あえてパズル性を犠牲にしている風。制服を用いたミスリードなんか面白いのだけれど、扱いがあっさりしていてちょっと勿体無いように思いました。

大胆な真相はある程度読めそうですが、そう思った読者を引っ掛ける微妙な記述があって、どちらにしても意外なもの。現代の作家なら叙述トリックでスマートに処理するところでしょうが、そうしないことで逆に難易度が上がっているのでは。ただ、犯罪計画のリスクが高すぎることもあわせて、謎解きにこだわるひとなら不満を覚えるかも。

ともあれ、前二作同様に軽快で読みやすく、しかも手の込んだミステリではあります。悪くない。

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