2013-04-07

アガサ・クリスティー「ポアロのクリスマス」


資産家で専制君主的な老人がクリスマスに息子たち夫婦――老人を憎んでいる者や、財政的に困っている者たち――を呼び集め、遺言状を書き換えることを宣言する。不穏な空気が漂う中、屋敷にすさまじい格闘の音と叫び声が響き渡った。家中のものが駆けつけて発見したのは、滅茶苦茶に荒らされた密室内で血まみれになって横たわる死体であった。

1938年のポアロもの。序文でクリスティ自身が書いているように黄金期を思わせるような殺人現場を扱った作品であります。事件が起こるタイミングも、この時期のクリスティにしては随分と早いです(それでも100ページを越えてはいますが)。

いかにも探偵小説らしい奇怪な殺害状況を巡る謎は手掛かりが充分出されているため、大雑把な見当は付くでしょう。こういうのはクリスティはそれほど得意ではなかったのだろうけれど、稚気が感じられる楽しい仕掛けではあります。
一方でフーダニットとしてはなかなか複雑で。偽の解決のために置かれた伏線に紛れた、真相に繋がる線だけを拾っていくのは難しい。読者を右往左往させておいて、その実・・・という仕掛けはいつもながらの冴え。ただ、今回は些か絵解きの肌理が粗いのは否めないですが。

大胆にしてあざとく、いかにもクリスティらしい作品であって、それまでのパターンを組み替えて巧く効果を上げているのですが、同時にいつもとあまり変わらないなという感じも受けました。新たな作風を試行錯誤しているようではあるのだけれど。
なお、『三幕の殺人』の犯人について言及があるので、未読のひとは注意を。

0 件のコメント:

コメントを投稿