2011-11-05
ジャック・カーリイ「デス・コレクターズ」
安モーテルの部屋で発見された全裸死体には異様な装飾が施されていた。そして、その殺人には30年前に死んだ大量殺人犯の残した絵画が絡んでいるようなのだ。特殊犯罪を扱う部署に属するカーソン・ライダー刑事と相棒のハリーは事件の背景を洗い出すべく、殺人鬼にまつわる品を収集するコレクターの世界の調査に乗り出す。その一方で、謎の人物がTVレポーターに事件の情報をリークし始めた。
デビュー作『百番目の男』でキャラクターの紹介が済んでいるせいか、今作では事件の捜査に直接関係ないようなエピソードはあまりなく、かなりすっきりした仕上がり。
また、前作では主人公の痛さが気になってしようがなかったのだけれど、そこらへんも改善されて安心して読める。相変わらず文学青年のような気取りが入っている場面もあるのですが、あまり嫌味にならず、いい味付けになっています。
プロット自体は現代的な意匠を取り除けば、結構古典的なものじゃないかと思う。複数の被害者たちに犯人から奇妙なメッセージが、というのはシャーロック・ホームズ譚にも見られるくらいで。
捜査結果に推測をつなぎ合わせる事で、枝葉に見えた事柄がひとつひとつ本筋に繋がっていく過程が読ませますが、それでも肝心の動機や犯人については五里霧中といった感じが終盤まで続きます。犯人像が浮かばないためか、奇怪な事件を扱ってはいるもののサイコサスペンス的な雰囲気はあまりありません。
大まかな流れから外れていた細かい違和感が綺麗に回収されていく真相は、かなり予想外な盲点を突いたもの。犯人設定などはロス・マクドナルドみたいだ。形良く纏まり、オーソドックスなミステリとしては一作目と比べ、ずっと上手くなってはいると思う。
推理の過程を読ませるような作品ではないけれど、本格ミステリとも共通する趣向を全く違った論理の文法と見せ方で実現している、といった印象です。
物語としても意外な反転が美しく、うまい一本。
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