2009-05-23

Spanky & Our Gang / The Complete Mercury Recordings


米Hip-o Select より2005年に出たスパンキー&アワー・ギャングの4枚組セット。
3枚のスタジオアルバムにグレイテスト・ヒッツ、ライブ盤の公式アルバムに加え、未発表曲やモノ・シングル・ミックスを収録した、現時点でこれ以上はないものです。

スパギャンのデビューアルバム「Spanky and Our Gang」は1967年リリース。トップテンシングルである "Sunday Will Never Be The Same" を収録。プロデュースはジェリー・ロス。この頃は4人組だった彼らの、リードボーカル+クロースハーモニーのスタイル、もしくは「パパパパ」コーラスが楽しめ、全体に明快でハッピーなポップソング集に仕上がっております。スパギャンというとスパンキー・マクファーレンの存在だけがクロースアップされますが、温かみある男声ボーカルも素晴らしい。"Distance" という曲など哀愁溢れるいい仕上がりであります。
このアルバム、あえて欠点を挙げるなら、男性コーラスが中低音に集まっているためか、オーケストラが入っている曲になるとべったりと厚く、抜けが悪いような瞬間があり、今聴くと少し時代を感じる、ということかしら。
そんな中、収録曲のうち2曲のアレンジを担当したボブ・ドロウとスチュワート・シャーフの仕事が光っています。カラフルで過不足なく配された演奏にコーラスの生き生きとした表情が映える、風通しのいいサウンドです。

そのせいかどうか、セカンドアルバム「Like To Get To Know You」(1968年リリース)からはプロデュースをドロウとシャーフが担当しています。ハッピーなだけでなく陰影に富み、ジャジーな面も見られるようになり、音楽的な幅が増したように思えます。アルバム全体としての流れも意識され、細部に凝られたつくりに。
また、スパギャン自体もメンバーが6人と増え、コーラスの音域は広がり、より美しく複雑な絡みが展開されるようになります。
一枚目と比べサウンドがシャープになり洗練の度が増したようで、サンシャインポップの傑作といって間違いないでしょうね、このアルバムは。そして、いい曲、アイディアがずらりと揃っています。ベストトラックはマーゴ・ガーヤンの書いた "Sunday Morning" かスチュワート・シャーフによるタイトル曲あたりが幻想的かつきらびやかで、唸ってしまう完成度でありますが、その他にもフレッド・ニール作の "Echoes (Everybody Talkin’)" のアレンジなど、ちょっと思いつかないんじゃないか、という感じで。

翌年にリリースされた3枚目の「Anything You Choose b/w Without Rhyme Or Reason」も前作の流れを汲みながら、さらにドラマチックでスケールの大きな音像になっていて、けれども大仰になりすぎてはいないのが、さすがドロウ&シャーフのセンス、といったところでしょうか。プロデュースだけでなく収録曲もこの2人の手によるものが半数を占めているのに注目。
また、タイトルがまるでシングル盤のようですが、このアルバムはそれぞれの収録曲間がシームレスに繋がっており、アナログ盤でのそれぞれの面が大きな一曲である、ということを示しているのでしょう。ちなみにアナログではそれぞれの面がサイドAとサイド1になっていて、いわば両A面であったようで、このCDセットではサイドAの "Anything You Choose" から始まっていますが、単独でこのアルバムがCD化されたときはサイド1の "Leopard Skin Phones" が一曲目になっていました。
全体にリズムが前に出てロック的なエッジを強めつつ、トータルアルバムとして精巧に組み立てられた面もあり、堂々たるポップアルバムとして前作と甲乙付けがたい出来だと思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿