2010-11-16

ポール・アルテ「殺す手紙」


新装丁のポケミス、現代的なデザインのせいで違和感は否めないですが。カバーのビニールも横線のないクリアなものになっているし。まあ、ページの小口が黄色い限りはポケミスということにしておきますか。
ところで、この本はポケミス初の一段組であります。200ページちょっとの作品なので、これで値段が1300円するのはちょっと高いな。

ポール・アルテ、今回訳されたのはツイスト博士が出てこない、ノンシリーズもの。しかも不可能犯罪が起こる本格ミステリでもなく、巻き込まれ型サスペンスといった体です。
けれども、読み終わってみればジャンルとか関係なく、これはポール・アルテの小説でありました、良くも悪くも。

殺人事件が起こった上、ドイツのスパイの因縁が絡み、プロットが二転・三転と急展開。短い物語の中にアイディアがこれでもか、と詰め込まれ退屈することはありません。また、なんだか胡散臭い、裏になにかあるぞという思わせぶりな雰囲気、短い章の終わりごとに必ず驚きが待っている、そういったいつものアルテらしいやり方も健在です。
ただ、本格ミステリなら美点と感じられる部分が今回のサスペンスでは必ずしもうまく嵌っていないという気がします。人工的過ぎたり、古臭さを感じる瞬間もあり、フランス・ミステリの悪い部分が出てしまった感で。

頭からケツまでサービス満点ではあり、個人的には面白く読めました。ミステリとしての芯は一本、通っていると思います。結末は先読みしやすいのですが、丁寧なミスリードはされていますし。ただ、出来がいいとは言えないなあ、やっぱり。
この作家のファンなら楽しめると思いますが。そうでない人は、まず別の作品にあたってからにしてもらうが吉。

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