プレイボーイズを率いてティーンエイジャー向けシングルをヒットさせ続けていたゲイリー・ルイスも、'60年代後半のヒッピー、ドラッグ、ベトナム戦争の時代にはそれまでと同じような優等生的なキャラクターで明朗なポップソング、というやり方では通用しにくくなっていた(スナッフ・ギャレットの言葉を借りれば「もう君向けのマーケットは無い」ということらしい)。
1967年リリースの、この「Listen!」というアルバムはソロ名義ともあってか、陰影ある、やや落ち着いた感触のオーケストラポップで占められており、オープナーにも乗りのいい曲ではなく、"Jill" というマイナーキーでミディアムスローの曲が置かれている。
プロデューサーにはゲイリー・クレインというひとがクレジットされていますが、実際に現場で腕をふるっていたのはアレンジャーのジャック・ニーチェと(ボナー&ゴードンの)ゲイリー・ゴードンであったそうだ。
選曲も良いのだけれど、とにかくアレンジが繊細かつアイディア豊富であり、メロウな中に淡くサイケデリアを滲ませた、その塩梅がすごくいい。有名曲のカバーも、はっとするような独創的な仕上がりであります。
アルバム内容を反映したジャケット写真も秀逸な、浮遊感溢れるフラワー・ポップ。儚げな雰囲気もまた、たまらない。
しかし、当時のアメリカにはこのような良く出来たソフトサウンディングな音楽が少なからずあったのに、その殆どはセールスが振るわなかったような気がする。時代とは恐ろしいな。
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