2011-05-04

Bruce Springsteen / Darkness On The Edge Of Town


1978年リリース。
このアルバムのサウンドはあまり好きではなかった。軽く、FM向けといった印象であり、特にドラムの響きや鍵盤の音色が気になって。"Badland" など、キラキラしたアレンジの曲では古臭い感じすら感じていた。このアルバムの収録曲はライヴでの方がずっと良い、とも。
昨年に出たボックス「The Promise: Darkness On The Edge Of Town Story」ではリマスター効果により、旧規格のCDより格段に音がクリアで太くなっていた。それでも、60年代ポップスのテイストを持った楽曲と、このアルバムで強調されている骨太のバンドサウンドの間で着地しそこねているような瞬間には、もっと軽快に仕上げてもよかったんじゃ、と思ってしまう。
ただ、「Darkness~」というアルバムはこの音でないといけなかったのだ、というのも本当だろうな。

スプリングスティーン自身はこのアルバムのサウンドについて、ドラマティックな「Born To Run」とはあえて違うものにした、それは「Darkness~」のキャラクターには合っていないからだ、というようなことを言っている。
ボーカルスタイルもこれ以前と比べれば、芝居がかったところが無い淡々としたものに変わっているように思う。

このアルバムの内容はとても重い。それも、特異な状況設定ではなく、どこにでもある生を描きながら、どうしようもなく翳りがあり、重いのだ。
大雑把にいうと前作「Born To Run」は「ここから抜け出そう」というアルバムだった。その、運命の引力を振り切る、という幻想はレトリックの魔法とそれを支えるべく周到に構築されたサウンドによって成立していた。
だが、「Darkness~」というアルバムでは「ここ」から出る事はできない、「ここではないどこか」などありはしないということを認めてしまった、その上で希望を歌うという困難を抱えている。それゆえか、聴き手の誤解の余地をある程度、抑制するような作法がとられているように思う。イメージの溢れ出るような饒舌さがなくなり、シンプルでかなり削り込まれているようである。抽象的な表現をとっていても、とても判り易く響く。

何度も「あきらめない」と歌われるその一方で、叶わなかった希望を抱いてしまったことに対しては「代償を払わねばならない」とも繰り返される。
そしてアルバムの最後で、語り手の男は全てを剥ぎ取られた状態で街外れの暗闇へ向かう。そこでどんなものに直面するかは、しかし、誰にも判らないままなのだ。

個人的に好きなのはアナログではA面の最後にあたるスロウ、"Racing In The Street"。
ひとつの季節の終わりを思わせる。

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