2012-04-08

Badfinger / Badfinger (eponymous title)


バッドフィンガー、ワーナー移籍後一枚目のアルバム、1974年リリース。

このアルバムはレコード会社との契約がきつかったために、アップルでの最終作「Ass」のレコーディングが終了したわずか一月半後に制作が始まったらしい。その強行スケジュールがたたったせいか、正直、練り込み不足という感じの、弱いマテリアルも含まれています。
特にジョーイ・モーランドの書く曲はアメリカ志向の大味なロックンロール、という感じのものが多くて、それらは一、二曲ならウエットに流れがちなアルバムの雰囲気を中和する効果があるのだろうけど、四曲もあるとさすがにテイストが違いすぎるかと。

その一方でサウンド面では、なかなか意欲的な取り組みが目に付く。
ジョン・コッシュの手によるスタイリッシュなアートワークはまるでモダンポップのアルバムのようであるけれど、それに照応するように、この作品では多彩な楽器の導入や、変ったエコー処理など、さまざまな面白い試みがなされています。これはプロデューサーであるクリス・トーマスの貢献なのだろうけれど、そのことにより従来からのパワーポップだけでない、バンドの新しい顔が引き出されているようでありますよ。
中でも、トム・エヴァンス作の "Why Don't We Talk" のイントロで、SEに導かれ、遠くでハーモニーが聴こえるうちにバンドが入ってくるところなど、実に格好いい。

とはいえ個人的に一番好きなのは、やはり泣きのメロディ、フックが素晴らしい "Lonely You" かな。ピート・ハムならでは、というか彼でしか書けない曲でしょう。

決して手放しで褒める気にはならないけれど、これもファンにとっては大事な一枚です。

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