2012-06-05

飯城勇三 編訳「エラリー・クイーンの災難」


世界初のクイーン・パロディ、パスティーシュ集ということだそうです。
内容は「贋作」「パロディ」「オマージュ」の三部からなり、全部で16編が収められていますが、その殆どが本邦初紹介であり、残りのものも現在、単行本で入手可能なものは外してある、という気合いの入ったセレクトになっております。結果としてはレアリティを優先したせいで玉石混交になったきらいはありますが、バラエティは凄い。

「第一部 贋作篇」が一番、ミステリとしては読み応えのあるものが揃っているかな。
冒頭のフランシス・ネヴィンス・ジュニアによる「生存者への公開状」では、後期クイーンの奇妙なミステリ世界が見事に再現されていて、感心。
また、エドワード・D・ホックは二作収められているのだけれど、うち「インクの輪」はクイーンのある有名長編を思わさずにいられないミッシングリンクものの力作なのですが、意外な展開はまるで法月綸太郎のよう。

「第二部 パロディ篇」では普段はたいして気にも留めずに読んでる、クイーン作品の奇矯性が極端に強調されていて、各編が単なるおふざけを超えた批評になっている、とは言いすぎ・・・だな。底が抜けたような言葉遊びが過ぎて、筋を追うにも一苦労なものもありますね。
クイーン親子がスタートレックの宇宙船に乗り込み謎解きをする「フーダニット」では、無茶な設定にも関わらず、いかにもクイーンらしい手掛かりが使われていて、逆にびっくり。

「第三部 オマージュ篇」では作品世界だけでなく、現実の作家としてのクイーンやEQMMの編者としてのクイーンに引っ掛けたものまで含められています。
最後に収められている「ドルリー」というのが、スティーヴン・キングの『ミザリー』のパロディにもなっている上、クイーン作品への理解も感じさせるという点で、面白かった。

以前に出たラジオ及びテレビドラマのシナリオ集と比較しても格段にマニア向けですね。クイーン作品についてある程度知っていないと、これは楽しめない一冊でしょう。

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