2012-06-17

アガサ・クリスティー「三幕の殺人」


エルキュール・ポアロものの、これも有名作でしょうね。再読ですが、犯人以外の細かいところはすっかり忘れていました。
『謎のクィン氏』のサタースウェイトが再登場。

引退した人気俳優の邸宅で行なわれたパーティで、誰からも恨みを買いそうにないような温和な老牧師がカクテルを飲んだとたん急死した。当初は事故だと思われていたのだが、数ヶ月後、別なパーティで俳優の友人である医師がやはり同じような状況で死亡、にわかに連続殺人の様相に。

俳優を中心とした素人探偵たちが中心になって進むお話であって、過程における推理の妙味は薄め。また、ミステリとしての最大のフックは「何故、そして、どうやって牧師は殺されたのか」というところで、ヒキはちと弱いか。

それでも、ポアロによる解決編に辿り着けば納得の面白さでありまして、メインになっているアイディアはなにげに凄いもの。読者を観客に置き換えることによって、叙述トリックを使わずにそれと同じような効果をあげることに成功しており、そのために作品全体が周到に構築されていたこともわかります。
ただ、今回、犯人を知った状態で読んでいると、相当にえげつないという印象も受けました。犯人の行動には読者を罠にかけるという以上の必然が感じられないようなものも目に付き、物語としては歪みが出ているように思います。

ともあれ、このあこぎな程の騙しもまたクリスティではあるよな。

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