2012-06-23

Spanky Wilson / Let It Be


今回Pヴァインから出たスパンキー・ウィルソンの紙ジャケCD、どうやらアナログ盤起しですね。結構楽しみにしていたんだけど。

彼女のサード・アルバム「Let It Be」は、アレンジャーとして知られるH.B.バーナム主宰のマザー・レコーズから1975年にリリースされたものですが、鈴木啓志氏のライナーノーツを読むと制作されたのは'71、2年頃なのではという推察がされており、実際の音からもそんな印象を受けます。

このアルバムではファンキーでリズムがタイトなノーザン乗りの曲が人気で、実際凄く格好良いな。
フレンズ・オブ・ディスティンクションの "Love Or Let Me Be Lonely" をロマンティックさは残しつつ、ぐっとタフでファンキーしたヴァージョンは、熱っぽいボーカルもさることながら、コーラスからヴァースに戻るところのきらびやかなアレンジが素晴らしい。
また、ワッツ103rdストリート・リズム・バンドの "Loveland" も原曲は軽やかなポップソング風なのだけれど、こちらもリズムを強調し、テンポを上げて乗り良い仕上がり。後半にはドラムブレイクもあって、これが決まってます。
両曲ともオリジナルを軽々と凌駕する出来、と個人的には思いますよ。

あと、タイトル曲はビートルズのあれで、他にはサイモン&ガーファンクルの "Bridge Over Troubled Water" も取り上げています。どちらも管弦が入ったドラマティックな作りなのですが、リズムがしっかり打っているところがポイントですね。
更に、ボビー・ジェントリーの "Fancy" なんかもやっていて、これもスワンプロックっぽい感触の仕上がりでなかなか。

その他はジャズアレンジのものや、ポピュラーボーカル然とした曲が多いですが、これらとソウル寄りのものとのテイストが違い過ぎるような。
これの前のアルバム「Doin' It」にも言えるんだけど、個々の曲は良く作られているのに、全体としてはとっ散らかっているという感じ。H.B.バーナムがプロデューサーとして彼女の個性を決め切れなかったのでは。凄くいいのが2、3曲あればもう満足、というひとはともかく、アルバムトータルを楽しみたい人間にはやや物足りないかもしれません。

もっとも、ジャンル云々にこだわらなければ、どの曲でもスパンキー嬢の歌唱は小手先の技術などに頼らない若々しく力一杯のもので、とてもチャーミングでありますよ。

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