パズルシリーズの第二作です。この作品は昔、旧訳で読んだことがあるのだけれど、そのときはあまり印象に残らなかったのだな。エラリー・クイーンの「国名シリーズ」の向こうを張った「パズルシリーズ」だと聞いていたので、さぞや凄いパズラーだろうと期待していたのがいけなかったか。
病気からの回復を果たしたピーター・ダルース。演劇プロデューサーとしての復帰をかけた舞台のリハーサルはしかし、最初からトラブル続き。ひとくせある俳優たちに、曰くある劇場。幽霊が目撃され、悪意ある何者かからの脅迫めいたメッセージが見つかる。そして、ついに死者までもが。
とにかく凄くテンポがいい。次々に過去の因縁や、意外な人物の繋がり、奇妙な謎が掘り起こされていきだれることが無い。そういった事件の解決に対する興味と同時に、舞台の成功を脅かすサスペンスが進行することでぐいぐい引き込まれて、まさに巻を措くあたわず。
また、ダルースをめぐる状態はかなり悲観的なんだけど、軽味を失っていないところも良いです。
そして、レンツ博士の古典的な名探偵ぶりは前作
『迷走パズル』と比べてもずっと際立っていて。物語の進行に伴い、不可解な謎をひとつひとつ解いていく姿は堂々たるものです。
それでも事件全体を貫くものが明らかにされないまま迎えるクライマックス、このプレゼンテーションが実に鮮やか。ドラマ部分と謎解きがぴたり、と嵌った格好良さはグレイト!、のひと言。
大トリックや精緻なロジックはありませんが、非常にうまく組み立てられたミステリでした。面白かった。
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