2013-01-05

フェリクス・J・パルマ「時の地図」


スペイン人の作者による、ヴィクトリア朝を舞台にしたSF冒険ロマンスといったらいいか。

H・G・ウエルズが作品「タイム・マシン」を発表した1896年、ロンドンは西暦2000年へのタイムトラベルツアーの話題で持ちきりになっていた、という設定。
全体が三部構成で、それぞれが違った色彩の物語になっています。
第一部は富豪の次男アンドリューが、八年前に切り裂きジャックの手に掛かって亡くなった愛する人を救うために、過去へ向かおうとするお話。
第二部では上流階級の娘であるクレアが、西暦2000年へのタイムトラベル先で人類軍を率いるシャクルトン将軍と熱烈な恋に落ちます。
少し美文調で悠々とした文体や、地の文で直接読者に話しかけてくる語り手の存在は、古き良き時代の冒険ロマンス小説を意識しているよう。
一方で興味の中心は勿論、タイムトラベルにあるのですが、竹本健治のいうミステロイド、そのSF版といった趣向もあって一筋縄ではいかない。

で、第三部ですが。
ロンドンで未来の武器を使ったとしか考えられないような傷を受けた死体が発見され、さらに事件現場の壁にはウエルズが書き上げたばかりで未だ誰も読んでいないはずの小説「透明人間」の冒頭が記されていた。
ここに至って物語の様相ががらっと変わります。一部・二部ともウエルズが重要な役割を果たしているのだけれど、ここでは彼が主人公であり、俄然SF要素が強くなっているし、最後に相応しいサスペンスも盛り上がっていきます。

意外な展開の連続で、いったいどのレベルで落とし前をつけるのか、という興味が愉しい小説でありました。ジャンルに関係なく面白いものを読みたい人向けですね(逆にSFプロパーのひとにとっては詰めが甘く、物足りないかも)。

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