第二次大戦中、カリブ海の島国に流れ着いたアメリカ人であるフィリップ・スタークは通信社の記者として働くこととなるが、急死した前任者をめぐる状況には不審なところがあった。スタークがその謎を追ううちに、さらなる不可解な出来事が明らかになっていき・・・。
これまで読んだことのあるマクロイ作品とは随分と雰囲気が違いますね。クリスティのノンシリーズ活劇ものをシリアスめにしたような感じといったらよいか。
主人公スタークは文無しながら知恵と腕っぷしには長けている陽性のキャラクター。彼が危険を承知で謎を追っていくうちに偶然手掛かりに出くわしたりする展開はスリラー味が濃いものです。事件の陰には大きな陰謀が見え隠れし、舞台のエキゾティックな味付けはプロットにも有機的に絡んできています。
一方で謎解きとしてみるとちょっと弱い、というか判りにくい。説明されればなるほどね、と納得するのだけれど。被害者が残したメモの意味は英語が苦手なひとにはピンとこないでしょう。
登場人物がどいつもこいつも何かを隠しているような中で、一番の秘密は何だったのか。丁寧な伏線や切れ味を感じさせる結末は、いかにもこの作家らしいもので嬉しくなりました。ただし、この趣向は先にマクロイの他の作品をいくつか当っていたほうが楽しめるのは確かであって、間違っても最初の一冊にはしないでね、と。
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