アルゼンチンのミュージシャン、ルイス・アルベルト・スピネッタによる2001年のアルバム。
「銀のもろこし」というタイトルはまるで宮沢賢治のようだな。
肉体性を感じさせるバンド演奏から人工的な箱庭ポップスまで、スタイルは自在に行き来するも、サウンド全体としては浮遊感を湛え、ヨーロッパ的なロマンティシズムを感じさせる、とてもメロウなもの。
一方、メロディからは英米のものよりはむしろ、日本のポップスに近いセンスを感じます。
冒頭に置かれた "El Enemigo" が良いです、凄く。透明な響きのギターとシンセサイザーの組み合わせは、'70年代中頃のトッド・ラングレンをアップデイトしたようである。そして、そこにニール・ヤングを思わせるリリシズムが炸裂する。極上のアダルト・メランコリック・ロックンロール。
また、"Abrazame Inocentemente" は下世話なアレンジにキャッチーなメロディのポップソング、なのに喚起するのはどうしようもなく切ない感情だ。
世界の中で迷子になってしまったよ、とっくに大人だというのに。
ひんやりした質感の音と甘いメロディの中で、発育不全な情感が溶けていく。
もう泣いたりはできないおっさんのためのモダンポップ。
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