2014-04-06

アガサ・クリスティー「死が最後にやってくる」


紀元前2000年のエジプト、権力者である家長は、若く美しい妾を伴って旅から帰ってきた。それをきっかけに、くすぶっていた家庭内の不満が顕在化していき、ついには死者が。

1944年発表、ノンシリーズもの長編。なかなかに冒険的な舞台設定の作品でありますが、出てくるキャラクターたちは現代物とあまり変わらず、むしろ典型化が激しいかな、という印象。
古代を舞台にしたことで、死者の呪いというミスティフィケーションがうまくいっているのですが、その一方で、いつものクリスティ作品らしい小道具の使用があまり見られず、人間心理の物語としての側面がより大きくなっているように思います。
物語中盤から事件は次々に起こっていきますし、フーダニットとしての形態をとってはいますが、警察や探偵が存在しないため、それらはまず家庭内の問題として処理されていきます。

事件を巡る状況には不可解なところがあるものの、それを前面には立てずに進行していくので、謎解きの興趣はやや薄く感じられるな。
誰も信用できない、というサスペンスの高まりは作者のクローズド・サークルものにも通ずるものであって、この辺りはうまい。

ミステリとして、現代ものでは出来ない趣向というのが周辺的な部分にかかっている。その工夫を面白く思うかどうか。
クリスティをある程度の量読んできたひと向けの作品ではないかしら。

0 件のコメント:

コメントを投稿