2014-09-28

フィリップ・K・ディック「宇宙の眼」


ペバトロン陽子ビーム加速器の見学をしていた人々は、突然の装置の暴走による事故に巻き込まれ、負傷する。やがて病院で意識を取り戻すのだが、どうもこの世界は何かがおかしい・・・・・・。


1957年作品。たしか筒井康隆がこの作品とフレドリック・ブラウンの『発狂した宇宙』を多元宇宙ものの古典として挙げていた、と思う。僕は昔、『虚空の眼』のタイトルで読んでいます。
今回の文庫化は中田耕治訳ということで、元々は'59年にハヤカワSFシリーズに入っていたものらしい。新たに手が入れられているようで、特に古さを感じさせない文章になっています。

世界から感じられる違和感の正体や原因というのは、割合早い段階で明かされてしまう。そして登場人物たちは事態の解決へと動くのだが、状況の異様さはエスカレートしていく。ときに悪夢のようであり、ときに馬鹿馬鹿しく、あるいはとてもリアリスティック。この部分に惜しげもなくアイディアがぶちこまれていて、どんどんと引き込まれますな。枠組みはSFだけれど、もう奇想小説としたほうがふさわしいような、不条理なユーモアも感じられて。特に主人公の家がグロテスクに変容していくイメージなど絶品。

展開はスピーディーでかつ明快、それでいてディックらしさも充分。
気軽に読めるけれど内容も濃い作品でした。面白いよ。

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