2014-12-29

Billy Butler & Infinity / Hung Up On You


ジェリー・バトラーの弟であるビリー、1973年に彼がグループを率いてMGM傘下のPrideというレーベルから出したアルバムが初CD化されました。ボーナストラックも3曲追加。
あまり聞いたことのないFever Dreamというところからのリイシューでして。ブックレットはペラ紙一枚で、作曲者はおろか、音源の権利クレジットすら記載されていません。肝心のマスタリングはというと、音圧がちょっと高すぎるものの、ちゃんとしたクリアな音ではあります。

さて、アルバムの方ですが。冒頭からスロウ2連発、これですっかりやられてしまう。
"I'm So Hung Up On You" は唯一ファルセットでリードを取る曲。落ち着いた歌い出しから一転、サビでの盛り上がりが素晴らしい正調スウィート・ソウルだ。それだけにあっさりとフェイドアウトしてしまうのが物足りなく、繰り返して聴きたくなる。
続いての "I Don't Want To Lose You" は陰影を湛えたメロディが、ややハスキーで優しげなテナーで歌われる。いかにもシカゴらしい乾いたドラムの音も甘いサウンドを引き締めているようで、好みです。

このアタマ2曲のスロウが抜きん出て良いのですが、残りはミディアムテンポのものが多め。全体に曲の粒が揃っていて、快調なシカゴ・ソウルが楽しめます。特に "Whatever's Fair" というミディアムが、抑制を効かせた中で泣きの入ったメロディが印象的で、気に入りました。収録曲のうち、この "Whatever's Fair" と先に挙げた "I Don't Want To Lose You" を含めた4曲をジェリー・バトラーも取り上げているのだけれど、こちらビリー版のほうが全体にテンポが早めで若々しいつくりになっています。
なお、アレンジャーを務めているジェリー・ロングはモータウンのスタッフだったひとのよう。"Storm" というミディアムはフォー・トップスを思わせるところがあるし、ファンクの "Free Yourself" なんてちょっとテンプス風です。

ボーナストラックはアルバム以前、'69、'70年のシングル曲。アルバム収録曲よりすっきりとしたサウンドで、中では張りのあるテナーが映える "Keep It To Yourself" の爽やかな仕上がりがいいな。

バックコーラスには女声が目立つ曲もあって、果たしてボーカルグループとしての実態はどのくらいあったのでしょうか。まあ、そんなことはどうでもいいくらい充実した内容の一枚でありますよ。

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