1951年発表になるノンシリーズ長編。中東、イラクの首都を舞台にした冒険スリラーです。
クリスティのスリラー作品ではお馴染み、若くて元気のいいお嬢さん、この作品ではヴィクトリアが国際的な謀略に巻き込まれていく、というお話。
軽薄さが仇をなして失業中のヴィクトリアは一目ぼれした相手の青年、エドワードを追ってバクダッドへ行きたいのですが先立つものがない。なんとかお金を使わずに行く方法がないかと知恵を絞ります。それと平行して命を狙われている人物や、ロンドンで活動するスパイなどがカットバック風に描かれていき、全体図をなかなか見せない。このあたりの期待感はなかなか。
作品の原題が "They Came to Baghdad" とあるのだけれど、中心になる登場人物たちがバグダッドに集まっていくことで、ばらばらに語られてきた要素が次第に結びついていきます。
物語の中盤に至って、ヴィクトリアがエドワードとようやく再会してからはクリスティ自身のトミーとタペンスものを思わせるところもあるのだが。
プロットがご都合主義全開なのは女史のスリラーではいつものこと。ただ、謎解きの面からしてもやや難ありかな。誰が悪事の首謀者であるかは割合に早い段階に見当が付く。その上での驚きも用意されてはいますが、ちょっと枝葉感が。
構えずに気楽に読むのが吉。要所要所のヒキは強い、ドキドキハラハラ編でございました。
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