2015-05-05

クリスチアナ・ブランド「猫とねずみ」


女性雑誌の記者、カティンカは休暇で故郷ウェールズに帰ったおりにふと思いついて、自分の雑誌に手紙をくれる読者であるアミスタを訪ねることにした。やっとのことで辿り着いたその屋敷は、村からは川で隔てられた山の中腹に孤立して建っていた。だが、そこに住む人々はアミスタなどという者は知らないという。一方で、何かが隠されているような気配もあったのだが・・・・・・。


1959年発表作、再読です。なんでもこの作品の続編が訳出されるということなんで、どんなだったっけ、と記憶を新たにするべく引っ張り出しました。

作者ブランドが前書きで「懐かしき古風なミステリー・メロドラマ」と書いているとおり、謎解きのミステリではなく、巻き込まれ型というか、おせっかいな女性が自分から怪しいところに首を突っ込んでいくサスペンスといったところ。特に序盤は時代がかった、シャーロック・ホームズにもこんな話があったなあ、という展開。
しかし、そこはブランド、プロットは一転・二転し、推理の妙もちゃんと用意されております。更には人物像がころころと入れ替わる描写など、疑惑と緊張で引っ張っていきます。そして勿論、アミスタとは誰なのか? という謎も。
終盤に入ると、思いがけない展開に伴って、伏線が次々に浮かび上がっていく。犯罪者像は強烈であるし、皮肉なテイストも流石であります。

ロマンス色が強く、ブランドの作品としては並というところですが、アイディアの密度は非常に高いですね。
やっぱり面白いや。惚れ直しました。

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