2015-12-06
ジョン・ディクスン・カー「髑髏城」
1931年発表になる第三長編で、アンリ・バンコランもの。新訳決定版と謳われています。
旧い版では文章の脱落があった、という話も聞いたことがありますが、その割に今回のものの方がページ数は減っているのね。
頭蓋骨をかたどった奇怪な城〈髑髏城〉、その持ち主であった高名な魔術師はありえないような状況で死亡していた。それから17年後、髑髏城を継ぎ受けた男が火だるまになりながらその城壁で最期を遂げた、という話。
事件といい、怪奇趣味が凄いですな。髑髏のお城って。
バンコランものの常としてユーモア味には乏しいのですが、そのかわりに臆面もないロマンティシズムが横溢。茫洋として雰囲気たっぷりの情景描写、バンコランの真意を汲み取りにくい発言、事実なのか比喩なのか判断しにくい表現などからは、ゴシック的なものも感じ取れます。
また、本作品ではバンコランの好敵手として、ドイツの捜査官アルンハイムが登場。ふたりは紳士的に振舞いながらも、互いに激しい火花を散らしつつ事件の解決を競います。はじめのうちはバンコランが先手を取っているように見えたものの、ある時点でアルンハイムは24時間以内に犯人を逮捕すると宣言。静かな面持ちでそれを聞いているバンコランでありましたが。
不可解で奇怪な事件はどうして起こされたのか。飛び切りのホワイ? ですが、正直これは推理のしようがないかな。
その一方で、フーダニットとしては細かい手掛かりを基にしながら、意外性もある謎解きが楽しめます。
推理合戦という趣向もいいですが、大時代的な雰囲気や道具立てなど伝奇的な部分も込みでの娯楽編として読むのが吉かと。
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