2016-03-17

コードウェイナー・スミス「スキャナーに生きがいはない」


コードウェイナー・スミスの残した〈人類補完機構〉シリーズの全中短編が、初訳・新訳を交えて三巻にまとめて出されることになった。これはその第一巻であります。海外では一冊の全集のかたちになっているものがあって、その最初の3分の1にあたるようだ。
まあ、殆どが以前に読んだことのあるものなのだけれど、今回は作品が(発表順ではなく)作中の年代順に並べられていて、そのおかげで全体をひとつの年代記として受け取れるようになっています。
いかにも全集らしく15ページの序文が置かれていて、その内容はこの本で初めてスミスに接する読者にはちんぷんかんぷんだろうが、言及されている破棄された作品や書かれずじまいであったアイディアには興味深いものがありますね。

異様なはずなのに妙に親しみを感じさせるキャラクターたち。
ドラマツルギーを知り尽くしているようでいて、けれど必ずしもそれにはとらわれない展開。
世界のあり方は常に断片的にしか提示されないが、グロテスクで残酷、けれど美しくてチャーミングな物語を味わうのに全てを理解する必要はないと思う。
しかし、久しぶりに読んだけれど、良いねえ。
中でも「星の海に魂の帆をかけた女」の「あのときぼくが行ったのなら、またきっと行く」のくだりはぐっとくるなあ。

第二巻『アルファ・ラルファ大通り』は夏までには出るという話だけれど、どうかな。そちらにはこれまで未訳だった作品は含まれないようですが、やはり楽しみではありますよ。

2 件のコメント:

  1. こんにちは。
    コードウェイナー・スミスの文庫本は4冊とも持ってるんですが、
    これは新訳でしかも未訳作品も収録されるのですね。
    やっぱり買わなきゃ。

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  2. こんばんは。
    今までの文庫に入っていないものは、全体で5作くらいしかないと思います。この「スキャナーに~」だと1作品です。
    ただ、新訳に関してはどれがそうだとはわかりませんが、伊藤典夫氏の丁寧な仕事からして、やはり持っていたいかな、とは思います。

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