2016-03-21

D・M・ディヴァイン「悪魔はすぐそこに」


ディヴァインはいくつか手を出したことがあるのだけど、けれんに乏しいせいかあまりピンとこなかったのよな。で、評判が一番良さそうな作品を読んでみた次第。

大学で講師を務めるピーターは、亡父の友人であったハクストン教授から助けを求められた。横領の咎で学内から追放されようとしているのだ。やがて追い詰められたハクストンは、かつて大学に起こった醜聞を暴きだして復讐してやる、と宣言。その過去の問題にはピーターの父親も深く関係していたのだが……。


なるほど読ませますね。語り口は落ち着いているけれど、いいタイミングでイベントが発生して興味を引っ張っていきます。また、人物の書き込みが良く、それもリーダビリティに寄与しているように思います。
終盤に向かってさらに事件が起こりそうな、不穏な空気が徐々に盛り上がっていくのも定番ですが、そういう当たり前の要素をしっかり作った、オーソドックスな面白さがあるんですね。

ミステリとしては全体が非常に丁寧に構築されています。メインの仕掛けはいい時期のクリスティが得意としていた手法、それをさらに徹底・深化させたようでもある。おそろしく大胆なダブルミーニングなど、いや、これは結構な筆力が無いと成り立たないものでしょう。
純粋にパズラーとして捉えるのなら、手掛かりを拾っていけば容疑者はすぐに絞られてしまうはずなのだけど、そのシンプルさこそが却ってスマートな解決へと結びついています。

大トリックがなくとも驚きは演出できる、という好例ですね。
しかし、個人的な好みからすると淡白すぎるかな。もう少し、騙しがあこぎであってもいいんじゃ、とは思いますが。ここら辺りが黄金時代ではなくて、1966年の作品ということなんでしょう。

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