2017-02-05
カーター・ディクスン「かくして殺人へ」
ときは戦時中、初めてものしたロマンス小説『欲望』が評判になったモニカ・スタントンは、映画化の話を受けてロンドンのスタジオに向かう。しかし、彼女に任されたのは自作ではなく、探偵小説『かくして殺人へ』を脚本にする仕事であった。そして、『欲望』のほうは『かくして~』の作者、ビル・カートライトが脚本化することとなった。
撮影スタジオを見学中、モニカは何者かによる硫酸を使ったトリックの犠牲になるところを、ビルのおかげで間一髪、防ぐことができた。だが、そのトリックはそもそもビルが考案したものだったのだ。そして、さらなる脅威が迫り・・・・・・。
1940年発表になる、ヘンリ・メリヴェール卿もの。
ヒロイン、モニカをビルが守ろうとするというお話で、不可能興味や怪奇的な味付け、おどろおどろしい演出はありませんが、その分テンポがよく、ロマンティック・コメディとサスペンスのバランスも取れていて、非常に読みやすい。
そもそも何故モニカが狙われるのか、その理由が一向にわからない。ビルは探偵作家として、自らの推理を組み立てるのですが、物語の中盤になってようやく登場するH・Mによって、それは否定されてしまいます。
真相のほうは意外な動機というか、隠された構図が見所です。クリスティ的な面白さ、といったらよいか。ただし、かなり無理のある犯行手段、あこぎな誤導などが気になってしまうかな。
戦時下であることがプロットと有機的に結びついているし、ユーモラスな落ちも決まった。
メインの趣向はやや小粒なのですが、色々と副次的なアイディアが盛られ、楽しいミステリになっています。
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