1973年に出版された、紀元前のエジプトを舞台にした戯曲。ミステリ要素はありません。実際に書かれたのは1937年、
『ナイルに死す』の頃であって、この時期にクリスティのなかではエジプトに対する関心が高まっていたのでしょう。
これまでにもいくつかクリスティの戯曲を読んできましたが、これはそのうちでも比較的初期に書かれたもの。そのせいなのかはわからないけれど、動きや小道具の使い方、表情など演出に関するト書きが少なく、ほとんど台詞のみで進行します。舞台背景についても非常にざっくりとした指示しかありません。そのため読んでいても、場面のイメージが浮かびにくく、話の流れ方にも緩急がないように思います。芝居に関心があるひとならそのあたりを自分で補って読めるのかもしれませんが、僕にはその素養はないなあ。
純粋に読み物として捉えると短編程度のプロットでしょうか。特に意外性もなく、そうなるだろうな、という風に展開してきます。もっとも、そういうわかりやすく王道的な物語として楽しまないといけないのでしょうが。いつもいつも、ひとを騙す、驚かすお話ばかりを書いているけれど、もっと太いドラマを手掛けたくなったのかも。
史実とは異なる部分があるそうだし、僕にはわからないような工夫が凝らされているのかもしれないけれど。ちょっと合わなかったですね。
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