2017-07-30

The Beach Boys / 1967: Sunshine Tomorrow


1967年のビーチ・ボーイズにフォーカスした2CD。タイトルの「Sunshine Tomorrow」は "Let The Wind Blow" の歌詞にあるフレーズです。


ディスク1はアルバム「Wild Honey」を中心にしたもの。
〈Wild Honey Stereo〉は新たに作成されたステレオ・ミックス。このアルバムはあまり音数がないので、分離を良くしても仕方がないと思っていたのだけれど、楽器やコーラスのディテイルがなかなか新鮮で、何度も繰り返し聴いております。"I'd Love Just Once To See You" の抜けの良さが気持ちいい。一方で、音質の向上は期待していたほどではなかったです。奥行きに乏しい音像といい、元々の録音のせいなのだろうな。
続いては〈Wild Honey Sessions〉が14トラック。「previously unreleased」とあるものの、ボーカルが入ったトラックに関してはボックスセットやコンピレイションなどで小出しになっていたもののミックスや編集違いが殆どで、もう驚くようなものは残っていないのだとは思う。ただ、今では入手し難いものもあるので、こうやってひとところにまとめられたのはいいかと。一方で、バッキング・トラック・セッションでは初めて聴くものが多く、中でも "Darlin'" のそれは進行の過程が興味深い。また、未発表曲のものもありますが、断片的で喰い足りない。
〈Wild Honey Live 1967 - 1970〉は「Wild Honey」収録曲のライヴヴァージョンが5曲。録音バランスがあまり良くないのが残念。
最後は "Mama Says" のボーカルセッションの模様で、試行錯誤の様子が伝わってきます。


ディスク2の始めは(時系列でいくとこちらのほうが「Wild Honey」より先ですが)〈Smiley Smile Sessions〉より10トラック。成立過程からして、純粋にアルバム「Smiley Smile」のためのセッションというのは、量があまり無いのだろうな。それはともかく、「Smiley Smile」本編に漂う密室性というか、わけのわからない感じは薄いですね。リラックスしていて、けれど美しい音楽で、これは嬉しい驚き。
続いてはブートレグにもなっている未発表アルバム〈Lei'd In Hawaii "Live" Album〉の音源が14トラック。ライヴ盤制作のために録音されたハワイでのコンサートが充分なクオリティにないと判断され、スタジオでの演奏に歓声を被せた疑似ライヴ盤を作ろうとしていたのだけれど、結局は没になったという代物。それもさもありなん、恐ろしくゆっるゆるの演奏・歌唱であります。ボックス・トップス、マインドベンダーズのヒット曲や、ビートルズの "With A Little Help From My Friends" なども取り上げているのですが、そこにビーチ・ボーイズらしいセンスが付け加えられているとも感じられないなあ。
そして、〈Live In Hawaii, August 1967〉は実際にハワイで行われたライヴ録音から5曲。このときはブライアン・ウィルソンが鍵盤で参加していて、ブルース・ジョンストンが不在。ドライヴ感のないよれよれの演奏はリアルですね。曲としては "Gettin' Hungry" のライヴというのが珍しいか。
そして〈Thanksgiving Tour 1967〉は11月のライヴ演奏が3曲。このときにはサポートメンバーが追加されているせいか、ぐっと余裕のあるものになっています。
最後はスタジオ録音ふたつ。"Surf's Up" は「Wild Honey」期のセッションから。既出のものより前半部分が長くなっているのが嬉しいところ。そして、"Surfer Girl" は前出「Lei'd In Hawaii」での録音をアカペラにミックスしたものです。


玉石混交というか、統一感には乏しいセットではあります。'60年代におけるビーチ・ボーイズのライヴ演奏に興味がないひとには少々きついかもしれません。まあ、買う人はどっちみち買うんだろうけれど。

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