2020-02-22
米澤穂信「巴里マカロンの謎」
11年ぶりとなる小市民シリーズ最新刊。四短編が収録されていますが、もったいなくて読めない。
読んだ。するっと。だって巧いんだもの。
「巴里マカロンの謎」 ホワイダニットとフーダニットが絡み、およそ手掛かりの無さそうな状況から、ロジックで可能性を絞り込んでいく手つきが気持ちいいったらありゃしない。伏線の数々もびしびし効いてくる。推理の辿り着く先は途中から見えてくるのだが、そこに至る過程で浮かび上がる他の可能性も意外性をはらんだもので楽しい。そして犯人確定のタイミング、その弛みの無さよ。
ちょっとブラックな締めも、おお、小市民シリーズってこんなだったよなあ、と思わせてくれるものだ。
「紐育チーズケーキの謎」 それはどこに隠されたのか。思わぬ手掛かりからの推理の飛躍はちょっと難度が高い。
しかし小山内さんと小鳩くんはお互いの心の動きが判りすぎるようで怖いな。
「伯林あげぱんの謎」 プレゼンの勝利というか。伏線はあからさまなほどであって、じゃあどうやってそこに辿り着くのか、を読ませる作品でありますね。これを謎解きミステリとして、しっかりと成立させるのはたいしたもの。「健吾が断言したことだけは、間違いなく事実だと信じることにする」という前提がしっかりと効いているし、何より手掛かりが大胆にして絶妙。
「花府シュークリームの謎」 この本の中では一番、展開がストレートなフーダニット。その分、推理のプロセスはスマートで、意外な手掛かりと動機が無理なくはまった感があります。ハッピーエンドも連作集の締めとして良いですね。
シュークリームはあまり印象に残らなかったけれど、それは別にいいか。
凄く面白かったのですが、巻末の初出一覧を見ると収録作は年一作ペースで発表されていたようで、そうすると次が出るのもまた、忘れた頃になりそう。
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