創元推理文庫からの新訳『Yの悲劇』です。
創元の新訳クイーンとしては2年ぶり、
前作『Xの悲劇』からは3年ぶり、
角川文庫での新訳『Yの悲劇』からは12年ぶりになります。最近はハヤカワ文庫が頑張っている分、創元のクイーンのほうは熱が落ち着いてきたのかな、という気はします。
本当をいうと『Yの悲劇』の仕掛けのひとつは、『Xの悲劇』の記憶があまり薄れてしまうと効果が弱まってしまうのだが。
さすがに今回はそんなに面白くは読めないだろう、と思っていたのだが、いやあ、そんなことはなかった。もちろん、筋書は知っているのだけれど、むしろ作品への理解が進むほどに事件全体の構図、その異様さに驚く。作中で何度も立ち上がる
故ヨーク・ハッターの影、これがたんに虚仮脅かしというのではなく必然であるというのも凄い。なかでも
『バニラ殺人の謎』の構想「一人称視点。犯人は筆者」であり、「ヨーク(私) Yと略す。犯人」のもつ威力と言ったら。クイーンがレベルの混交に対して自覚的であったことを明確に示すものだ。
そして、それほどまでに奇妙な事件が証拠に基づいたシンプルなロジックで解かれてしまう、というのもまたクイーンらしい恰好良さ。
もし後期のクイーンなら真犯人として
ヨーク・ハッターを名指したか。あるいは3度目の未遂事件の前までは、真犯人は決定不可能としたかもしれない、なんてことを考えました。
あと、若島正の解説はめちゃめちゃ明晰、10ページほどだがとても面白かった。
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