2023-11-23
アンソニー・ホロヴィッツ「ナイフをひねれば」
英国では昨年に発表された探偵ホーソーンものの第四作。
今作ではホロヴィッツがホーソーンに、もう新たにお前が主人公の小説は書かない、と訣別を告げる。しかし、その後にホロヴィッツは殺人事件の容疑者として逮捕され、頼れるのはあいつしかいない、となる。
今更に気付いたのですが、作内のホロヴィッツはホーソーンより一回り以上、年長なのですね。ホーソーンから相棒、なんて呼ばれているから、同じくらいの年代と勘違いしていました。
これまでも作者アンソニー・ホロヴィッツの仕事上のキャリアが、そのまま作品内のホロヴィッツのものとされてきたのだが、今回はそれが効果的に使われている。それで、ホロヴィッツが事件に巻き込まれるまでの流れがとてもうまく書かれているように思います。
ホーソーンが捜査に取り掛かった序盤は関係者への聞き取りの繰り返しなのですが、作内ホロヴィッツに強い容疑がかけられているためか、かなりテンポよく展開していきます。
そして全体の半ばを過ぎたあたりで、事件の起こったロンドンを離れ、被害者の過去を掘り起こすパートに。ここがとてもよいです。どちらかというと私立探偵小説的な面白さなのですが、意外な事実が次々と明らかになっていく迫力が素晴らしく、ホーソーンも恰好いい。
解決編に入るとホーソーンが真正面から名探偵役を演じてくれます。少し芝居がかっているほどに。そして、その真相はとてもシンプルかつフェアで、クリスティ味を今までで一番強く感じました。特にダブル・ミーニング、言葉だけでなく行動のダブル・ミーニングは意表を突くものです。また、ドラマとの食い合わせもとてもうまくいっている。
前作が謎解きにやや雑なところがあって、このシリーズは落ちてきたかなと思ったのだけれど、今回はしっかりと組み立てられていると思います。面白かった。
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