2024-05-27

Chris Clark / The Motown Collection


モータウンで1960年代に活動した白人女性シンガー、クリス・クラークの2CD音源集。2005年に英国で出されたれたもので、やはりかの国でのこういった音楽のニーズは高いのですね。
ディスク1にはリリースされた二枚のアルバムとシングル・オンリーの曲が25曲。ディスク2には未発表のものが同じく25曲収録されています。

一枚目のアルバム「Soul Sounds」は1967年リリース。シングル曲を中心にした寄せ集めらしく、曲ごとに違うプロデューサーがついています。音楽のほうは当時の典型的なデトロイト・ノーザンなのですが、さすがに往時のモータウンらしい軽快かつシャープな仕上がり。主役のクラークさんは力強くもしなやか、少しハスキーなところのある歌声で恰好よく乗りこなしています。
全体に安心して聴けるアルバムですが、スマッシュ・ヒットした "Love's Gone Bad" はホランド=ドジャー=ホランド制作ながら、モータウンの類型を抜け出した仕上がり。思わず「おっ」となりますね。

「Soul Sounds」が時たま話題に上がるアルバムとすると、その二年後に出されたセカンド「CC Rides Again」は単独での再発もなく、滅多に触れられることもありません。このアルバムをリリースするためだけにモータウンはWeedというサブ・レーベルを立て、さらにレコードにはクリス・クラークの名はなく、ただ「CC Rides Again」と書いてあるのみと、オブスキュアの見本のよう(実際、200枚ほどしか売れなかったそう)。
中身の方はというと、これが一枚目とは全く違うものになっているのですね。いわゆるモータウンらしいサウンドではありません。プロデュースを任されたディーク・リチャーズによればR&Bのファンは良く知らない白人女性シンガーの歌など聴きたくならない、という判断がなされたそうで(何を今更、ですが)、ターゲットとするマーケットを変えたのでしょう。また、とても急なスケジュールで制作されたためにオリジナルの楽曲は2曲しか用意できず、残りは当時のヒット曲や有名曲のカバーとなっています。
聴き始めるとアルバム冒頭、いきなりウィリアム・テル序曲が流れ出し、面食らうこと必至。しかし、それに続く "C.C. Rider" がかなりいけてるスワンプ・ロックで一安心。残る曲もブルー・アイド・ソウルとして聴けるものと、がっつりミドル・オブ・ザ・ロードなポップスの混交で、同時代のダスティ・スプリングフィールドに近いテイスト。歌唱も申し分なく、期待するものを間違えなければ悪くない出来なのです。中ではアルバムの為のオリジナルである "How About You" がソウル色はまったくありませんが、普通にソフトサウンディングなポップスとして気に入りました。

なお、未発表曲はどれもきっちり最後まで仕上げられており、それが公式リリースされたのと同じ量あるというもので、モータウンのシステム化されたプロダクションの凄さを感じます。他のシンガーやグループで親しんできた曲の少しアレンジの違うヴァージョンなども楽しめ、‘60年代モータウン好きなら不満なく聴くことが出来るかと。

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