昨年発表された長編で、函館を舞台にしたシリーズの最終作です。
関係者が重複した事件が断続的に三度起こるのだが、個々の事件の結びつきが見出しにくい。シリーズのこれまでの作品同様、複雑に絡み合った人間関係が背景にあり、さらに遠い過去にも何やら因縁が。
前作の後、探偵役であるジャン・ピエール青年がフランスに帰国したため、後半までは捜査小説としての趣が強い。その過程での意外な展開も楽しめますが、本書の帯の後ろでは少しその辺りを割っているので見ない方がいいかも。
警察では二つの事件についてはとりあえずの決着をつけつつも、残りのひとつに関しては捜査が行き詰まりに。そんな折、舟見警部補のもとにジャン・ピエールから手紙が送られてくる。なんと、一時的に日本に戻ってくる用事があるというのだ。
舟見から説明を受けながら現場を見て回るジャン・ピエール。新たな事実の発見などは無さそうだが、紙面にしてわずか4ページほどの間で真相に到達する。つまり、手掛かりは既に揃っていたということだ。
そうして明かされる奸計は驚きもので、読んでいて声を上げちゃいました。ひとによってはふざけるな! と腹を立てるかもしれない。しかし伏線はふんだんにあるし、それを成立させるための描写は(思い起こせば)とてもスリリングです。何より、それによって全てがひとつの流れの中に綺麗に収まってしまうのであるから、仕方ないではないか。
グレイトなハード・パズラーで、個人的には大満足です。
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