クリッターズといえば、昨年Now Soundsからプロジェクト3在籍時の音源がリイシューされていましたが、今回はそれより前の時期のもので、副題は「THE COMPLETE KAPP & MUSICOR RECORDINGS」とされています。彼らのKappレーベル時代のものとしては以前にもコンプリートと銘打たれたものがありましたが、今回はそれ以前のMusicorレーベルに残された三曲と、Kappから離れるどさくさに素性のあやしいところから出たシングル曲が追加されています。
果たして古いCDと比べて少しは音が良くなっているのかな、と実際に手にしてみるとパッケージ裏には「FROM THE MONO MASTERS」と書かれていて。なるほど、今回のは単なる出し直しではなくて、最近Now Soundsが進めているアソシエイションやハーパーズ・ビザールのモノラル再発と同じ流れのものだったのだな。
で、軽く聴きくらべてみたのだが。う~ん。ステレオミックスの方がきらきらして軽やかな感じかな。モノラルの方が穏やかだけれど、各楽器の分離は悪くないし、奥行きはちゃんとあって。甲乙付け難いというか、それほど印象が違わないというのが本当のところ。個人的にはモノの方が落ち着いて聴けるけれど、これは趣味の問題ですね。
なお、今回新たに追加された五曲ですが、悪くもないが、取り立てて特徴も無い出来かな。
ステレオミックス収録CD。あまり変わらないね。 |
「Younger Girl」は1966年にリリースされた、クリッターズのファースト・アルバム。基本的なスタイルは、マージービート風のコーラスを生かした、陰影豊かなフォークロックといった感じ。
タイトル曲であるラヴィン・スプーンフルのカバー "Younger Girl"、ジャッキー・デシャノンの "Children And Flowers" も良いですが、個人的に気に入っているのはメンバーのオリジナル曲のうちで少しメランコリックな味わいのあるもの。スマッシュヒットした "Mr. Dieingly Sad" は勿論、メロウな "Gone For Awhile" の間奏前後の流れとか、"Forever Or No More" の繊細さを感じさせるコーラスアレンジなど何とも言えない雰囲気でたまらないですな。
さらに、アルバムより後に出たシングル曲にも優れたものがあって。
アンダース&ポンシア制作の "Bad Misunderstanding" と "Marryin' Kind Of Love" 、これらはもろトレイドウィンズの世界。
そして、哀感を湛えたメロディで始まり、一気に疾走していくようなハーモニーによる盛り上がりが素晴らしい "Don't Let The Rain Fall On Me"。オリジナル曲ではベストとしたい出来であります。