どうしようもなくなって落ち込んだときには
ビリー・ホリディやコルトレーンを聴けばいい
彼らが問題を洗い流してくれるさ
("Lady Day And John Coltrane")
英Aceからギル・スコット・ヘロンのキャリア最初期、フライング・ダッチマン・レーベル在籍時に残した録音を纏めた三枚組CDが出ました。
ギルはこの当時三枚のアルバムを制作しているのだけれど、今回のセットではそれらのシークエンスがばらされているので、そこは好みが分かれるところ。
ブックレットには当時のスタジオ風景の写真が多く載せられ、ライナーノーツは相棒ブライアン・ジャクソンやプロデューサーのボブ・シールのコメントが盛り込まれたもので読み応えがあります。
ディスク1は「SONGS」と題されていて、唄物を集めたもの。ファースト「Small Talk At 125th And Lenox」(1970年)から2曲、セカンド「Pieces Of A Man」(1971年)からは1曲を除いた全部、サード「Free Will」(1972年)から半分。改めて聴いても、都会的で硬派な面とメロウさのバランスが実に格好いい。
今まで敬遠して聴いていなかったファーストにも唄物といっておかしくないトラックがあった、と判ったのが個人的には収穫。しかし、せめて制作時期順に曲を並べて欲しかったというのが本当のところです。
ディスク2は「POETRY, JAZZ & THE BLUES」。内容は三枚のアルバム収録曲のうちディスク1に入れてない曲全て。殆どがポエトリー・リーディングで、箸休めのようにブルースがちょこちょこ混じっています。バックがパーカッションのみのものが多く、内容は社会的テーマが中心で口調も堅めとあって、CD1枚通して聴くのはなかなかキツイものがある。
バーナード・パーディのアルバムに客演したときの曲もひとつ入っているのだけれど、これといって特徴のないブルース。このディスクはあんまり聴かないかも。
ディスク3「THE ALTERNATE FREE WILL」はその名の通り、サードアルバム「Free Will」のオルタネイト集で、「All previously unreleased」と書かれています。ただ、僕は未聴なのだけれど過去に「Free Will」に8曲の別テイクを付けたCDが出ていたそうなので、もしかしたらそれとダブるものもあるかもしれません。
リマスターは文句無し、ナチュラルで長時間聴いていても疲れない。いつもながらAceの仕事は抜かりが無い。
ただし、入門編には向いていないセットではあります。これから初期のギル・スコット・ヘロンを聴こうか、というひとにはやはり単体で「Pieces Of A Man」を勧めます。