1960年代米国のアイドル、ドナ・ローレン。彼女が1964~66年にキャピトルに残した音源のコンプリート盤です。唯一のアルバム「Beach Blanket Bingo」にシングル・オンリーのもの、さらには未発表のものまで収録されています。
キャピトルでのレコード制作、そのはじめの頃はプロデュースをデヴィッド・アクセルロッド、アレンジをH.B.バーナムが担当。当時、ドナ嬢はまだ17歳でしたが、既に堂々とした歌いっぷりであります。
R&Bを隠し味にしたようなポップソングが目を引く中でも、キング&ゴフィン作の "Just A Little Girl" がひとつ抜けた出来で。リトル・エヴァのカバーですが、フィル・スペクターの影響を感じさせるアレンジが巧くはまっています。
'65年になると唯一のアルバム「Beach Blanket Bingo」が制作されます。これはドナも出演していた同名映画の挿入歌を取り上げた作品で、劇中でホンデルズやフランキー・アヴァロン、アネットらが歌っていた曲を、アレンジも新たにドナのボーカルで聴くことができます。
しかし、単独のアルバムとしてみると、正直それほどの出来ではないかな。素材のミスマッチを感じてしまう曲や、映画のコンテキストから離れてしまうと凡庸に響くものもあって。オープナーに当たる "Cycle Set" は格好いいサーフ/ホット・ロッド・ナンバーで、このアルバムの中ではベストに思えるけれど、それでもホンデルズのヴァージョンのほうに分があるように感じます。また、"It Only Hurts When I Cry" も、映画でドナ自身が歌っていたスロウなヴァージョンのほうがずっといい。
ジャケットはいいのだけど |
同年六月のセッションからは制作チームが変わります。プロデュースがスティーヴ・ダグラス、アレンジがジャック・ニーチェあるいはビリー・ストレンジ。サウンドのほうはぐっと繊細な印象のものに。個人的にはこの時期のものが一番好みですね。
特に気に入ったのはロネッツの(当時は未発表曲)カバー "Woman In Love (With You)" で、ややすっきり目ではあるものの、これはほぼウォールズ・オブ・サウンド。本家と同じスタッフなので、当たり前のように完成度が高い。
また、ボー・ブラメルズがバックを務めた "It's Gotta Be" というのがフォークロック風味であって、これも悪くない。
'66年にはキャピトルでの最後のシングルが出されます。プロデュースはアル・ディ・ローリー、アレンジはジーン・ペイジ。いいのだけど、洗練されすぎていてもはや一体どういう客層に向けて作られたのだろうか、という気もする。
ともあれ、ガール・ポップのファンなら聴いて損はないとは思いますし、特にジャック・ニーチェによるジャッキー・デシャノンあたりの仕事が気に入っているひとなら、いいんじゃないですかね。