2015-04-29

麻耶雄嵩「あぶない叔父さん」


2011~14年にかけて雑誌掲載された五短編に、書き下ろしひとつを加えた連作集。タイトルはアンクル・アブナーとかけてあるのでしょうか。
霧に包まれた田舎町に住む高校生、優斗は寺の息子であります。そして、寺の敷地内の離れにはなんでも屋を営む、父親の弟が住んでいた。優斗はこの叔父(明らかに金田一耕助ふうだ)を慕っていて、離れに寄っては相談事を持ち込みます。

帯に書かれているように「探偵のいない」本格ミステリ、というコンセプトの本作。結果として、凄く独創的で気持ちの悪い読み物になっています。
作品の性格上、ミステリとしてはあまり複雑なものにはできないわけですが、それでも丁寧に作られてはいます。事件の様態そのものを誤認させるようなものが多く、その手続きには都筑道夫を思わせるところも。
しかし、例外的に叔父さんが自ら探偵役を買って出る「最後の海」という短編が一番、切れがいいのも正直なところかな。

また、順を追って読んでいくうちに、だんだんと真相解明シーンが繰り返しギャグにしか思えなくなってくるのが可笑しい。おいおい、簡単に受け入れるんじゃないよ、どうして突っ込むやつがいないんだ、という。
驚くほど馬鹿馬鹿しいトリック/ロジックが採用されているものもありますが、これらの雰囲気の中ではうまく生きているかと。

連作全体を通じての大ネタが仕掛けられているわけではないので、麻耶雄嵩としては軽めの一冊かしら。
面白かったけれど、この人を喰ったようなテイストは読者を選びそうだな。何にせよ、構えず、気軽に読むが吉。

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