さあて、XTCのリイシュー・シリーズ、CD+ブルーレイ版「Oranges & Lemons」(1989年作)であります。なんだかプレイヤーによってはブルーレイ・ディスクが動作しないそうですね。うちの中華製のやつでは特に問題ありませんでしたが。
内容はリミックスにオリジナル・ミックス、カラオケ、デモやリハーサル、そんでもってプロモ映像とか。
うちにはサラウンド環境がないので、ステレオ・ミックスしか聴けないんだけど。新ミックスはドラムが前面に出ていてパワフルな印象で、これは好みが分かれるかも。そんでもって、曲によっては今までは埋もれていたようなコーラスが前面に出ていて、よりカラフルになっています。
オリジナル・ミックスはフラット・トランスファーであって、新ミックスと比べると音圧が控えめなのだけど、今回聴き直してみて、これも決して悪くないと思いました。というか、新ミックスが従来のイメージを尊重しながらも奥行きとディテイルを付け加えた、という感じですかね。
カラオケはまあ、一回聴けばいいか。
で、大量にあるレア・トラックですね。
<Album In Demo & Work Tape Form>は収録曲全てのデモ。これは結構、ブートなんかで聴いたことのあるひとも多いんじゃないかな。だいたい打ち込みドラムにベース、ギター2本くらいで演っていますが、曲の基本的な構成はほぼ固まっているので意外なものはあまりないすね。あえて挙げるなら "Garden Of Earthly Delights" がエスニック臭がよりむき出しというか、アングラっぽくて面白いです。また、"King For A Day" は内省的な表情が感じられるもの。
<Extra Demos & Works Tapes>はもっと初期段階のデモ集であって、シングル・オンリーや別名義で出されたものなんかも含め、この時期に残された録音をざっくりとさらっているという感じ。ヴァラエティもあって、今回のレア・トラックではこの部分が一番の聴き所では。しかし、2つある "The Mayor Of Simpleton" の初期ヴァージョンはタイトルが同じだけでまるっきり別の曲だな。
<Rehearsals At Leeds Studios L.A.>はレコーディング入りする前のリハですかね。スタジオ・ライヴのような感触。
<Promo & ID Work>アメリカやカナダのラジオ向けのプロモーションメッセージではなぜかビートルズの "Blackbird" やミュージカル曲の "Happy Talk" なんかを演っています。またゲフィンのオムニバス盤に収録されたクリスマス・ソング&メッセージも。
<Other Recordings>はここまでにくくりに入らないもので、キャプテン・ビーフハートのトリビュート盤に収録された "Ella Guru" のカバーや、マージービートな佳曲 "My Train Is Coming" に別ミックスが少々。あと、このセクションでリモコンの右カーソルを押すと隠しトラックが再生されます。
映像としてはプロモ・クリップと、"The Road To Oranges & Lemons" と題された、ここまでのXTCの歩みを人形劇で振り返るという内容の実に馬鹿馬鹿しいビデオが収録。
お気楽スパイ映画風の "The Mayor Of Simpleton" が意外に楽しいのだが、UKとUSヴァージョンで随分と編集が違うのを見て、レコード会社も力を入れて売ろうとしていたのだなあ、と思いました。
このアルバムはある時期に凄くよく聴いていたために、良し悪しとかはもうあまり分からなくなっている。距離をとって接することができないのですな。改め聴いても、"King for a Day" は「Skylarking」に入っていてもおかしくない曲だよね、とかその程度のことしか思い浮かばない。
そうそう、"Hold Me My Daddy" は昔から好きだったけど、エルヴィス・コステロが扱いそうなテーマの曲でもあるな。いい年のおっさんになってから聴くとやけに染みることよ。
"hold me my daddy, I forgot to say I love you"