田舎に旅行中の技師、スタークウェッダーは道に迷ってしまったために、助力を求めてたまたま目に付いた屋敷に入っていく。すると、そこには主人である男の射殺体があり、そばでは男の妻であるローラが、銃を持って立ちつくしていた。スタークウェッダーはローラの境遇に同情し、外部からの強盗があったかのように現場を偽装する。
1958年発表の戯曲。読み物としては長めの中編、というボリューム。
序盤は倒叙ミステリのように進行していくのだが、警察の捜査が始まると不可解な手掛かりが見つかっていき、事件の様相が変わってくる。
さまざまな疑惑を搔き立てつつ興味を引っ張っていき、関係者の誰が真実を語っているのか、あるいは無実なのかが分からなくなってしまう。小説なら叙述トリック等を使わない限り、なかなかこうはいかないと思わせる感覚であり、ここら辺りが内面描写の無い、戯曲の特長であるのだろう。
物語は終盤、大きな展開を経た後に、盲点を付いた綺麗な収束を見せます。物語の最初のほうで感じたある違和感が、ここに至って解消されるのもいい。
シンプルなアイディアを効果的に生かした、良い出来の作品でした。
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