クリエイションの1965~68年におけるスタジオ録音をまとめた2CDアンソロジー、米Numeroより登場です。新規にテープトランスファーからやり直され、マスタリングは当時のプロデューサーであるシェル・ターミー監修のもとで行われました。
ちなみに5月には英Edselより再結成後のキャリアもフォローした4CD+DVDのセット「Creation Theory」も出る予定。どちらを購入するか、凄く迷ったんですよ。前身バンドであるマーク・フォーの音源が「Creation Theory」には8曲入ってるんだけど、「Action Painting」には収録時間の関係か4曲しかない。あと、「Creation Theory」のDVDには1966、67年の演奏も5曲入っているのだ。
細かいことを言えば「Creation Theory」の方を持っていたい。しかし、個人的にあまりごっついセットのものは何度も繰り返して聴くことが少なくなってきているのです。あと、EdselよりNumeroのほうが丁寧な仕事のイメージがある。
CDは紙のポケットに入っているのだが、サイズがきついので取り出す際に破れそう |
パッケージはCDサイズのハードカバー本。写真は豊富だし、ライナーノーツはバンドの歴史、全レコーディングについてのコメントの付いた詳細なもので、読み応えがあります。
これによればマーク・フォー時代、ロックンロールのカバー・バンドから独自のR&Bへの方向転換に際して非常に大きな影響を受けたのは、トゥモロウの前身バンドであるフォー・プラス・ワンの演奏だったという。
その他にも、"Tom Tom" は "Painter Man" の改作だとか、"How Does It Feel To Feel" というフレーズはディランの "Like A Rolling Stone" の歌詞から来ている、などなど。
ディスク1はオリジナル・モノラル・ミックスのリマスターで固められています。
しかし、最初期のサウンドはザ・フーそっくりだな。鍵盤はニッキー・ホプキンズだし。まあ、そこから突出しようとしている個性がギターのボウイングなのだけど。何にしろ、凄く格好いいからOKだ。
今回のリイシューではクレジットやバンド・ヒストリーが書かれているので、どこまでがオリジナル・ギタリストであるエディ・フィリップスの演奏なのがが、ある程度わかりました。このディスク1でいうと13、14、17、18、22曲目がロニー・ウッド参加後の演奏。
はっきりしないのが活動末期にリリースされた "Bonie Moronie" と "Mercy, Mercy, Mercy" です。"Bonie Moronie" はフィリップス在籍時の未完成トラックに後からボーカル入れをしたものではないか、また、"Mercy, Mercy, Mercy" の演奏はセッション・ミュージシャンによるのではないかと推測されていますが、果たして。
ディスク2に入ると、まずマーク・フォーのシングル曲が4曲。こちらの音質も上々。あとは新規ステレオ・ミックスが15曲に、バッキングトラックが4曲(うちふたつが未発表)という構成です。
ステレオ・ミックスが凄くいいですね。音質は抜群で、モノラルだと埋もれているようなパートも生々しく響きます。まあ、凶暴な迫力ならモノラルが上ですが、新ミックスにはこれまで気付かなかったようなアレンジのアイディアを発見したりという楽しみがあります。
モッド・ビートからサイケポップまで変化しながら、独特のヘビーな感覚があるのが彼らの個性であります。今回、そのキャリアを意識しながら聴いてみると、なるほどギタリスト交代後ではそのサウンドの手触りは変わっているのかな(あいまい)。エディ・フィリップスのプレイからはハードロック的なものの萌芽が感じられます。