2011-02-14

三津田信三「作者不詳」


編集者・三津田信三を狂言回しにした三部作の二作目、ですが独立した作品として読めます。

いわくありげな同人誌「迷宮草子」、そこには7編の奇妙な物語が記されていた。そして、「迷宮草子」を一旦読み始めたものは、そこに書かれた物語に合理的な解決をつけなくては、怪異に取り込まれ、消失してしまうという。

ホラーとミステリを合体させた連作短編集、ということになりますか。
それぞれテーマとして、ドッペルゲンガー、衆人監視下での消失、毒殺、倒叙、孤島での皆殺し等趣向が凝らされており、その上、各編の文体を変えるなど同人誌としての体裁もしっかり。
謎解きではさまざまな可能性を検討され、多重解決めいた面白さも。そして必ず盲点を突く真相が用意されており、独立したミステリ短編として申し分ない。また、事件に解決をつけても、それですっきりさせてしまうのでなく、むしろ不気味な余韻を残すのもたまらない。

メタ趣向を突き詰めた感もあり、「迷宮草子」の作品に現実的に整理を付ける一方で、作品内現実レベルではどんどん得体の知れないものに侵食されていく、という顛倒が強烈です。
最後に「迷宮草子」そのものの謎に迫るのですが、ここで腰砕けにならずに、むしろさらに迫力が増していくのは流石。しっかり長編としても成立しています。

投入されたアイディアの密度がとんでもなく高く、刀城言耶シリーズを書く前からこの作家は凄かった、ということが確認できますねー。

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