2011-03-21

マイクル・コーニイ「ハローサマー、グッドバイ」


二年以上積んであった一冊を、ようやく消化。評判を聞いて買ったものの、帯の「SF恋愛小説の最高峰」という文字に尻込みしていたのですよ。

地球に良く似た星を舞台とした、(人間に極めて近い)少年少女の物語です。海辺の町で、身分の差等の障壁を越えた恋愛が育っていく。
異世界の構築は派手ではないものの、特異な環境や生物などが生活に密着しており、無理なく受け入れられるものになっています。

正直、途中までは読み進めるのがしんどかった。主人公の少年は反抗期入ったくらいの時期だろうか賢しげであって、権威主義的な両親にことある毎に反発する、その青い痛さ。読んでいる自分はむしろ、その親の立場に近いしね。
あと、描かれる恋愛は最初の方こそ奥手なものだが、次第に大胆になって行き、始終いちゃつくようになるのだな。

それが、物語中ほどで戦争の激化により環境が激変、それに少年たちは翻弄されていきます。ここら辺から展開がスリリングで引き込まれ、目が離せなくなってきた。
さらに後半にはこれが地球の物語ではなく、異世界ものであることを思い出させる衝撃的な事実が告げられ、一気にディストピアものの様相を強めていく。
いったいどうなってしまうのか、そういう思いに駆られて読んでいくと。

おおおお! これは。
残り数ページで思わぬ次元に話が展開していき、それまでの世界観が全てひっくり返される。思い起こせば、伏線もしっかり張られていたのね。
全くの最後になってSF小説として真の姿を現すのだな。いや、やられたぜ。

わが国の現代ミステリのファンにも合うでしょうね、これは。続編も訳出されるなら読んでみたくなった。

0 件のコメント:

コメントを投稿