2012-01-01

霞流一「スパイダーZ」


なんだか凄くごちゃごちゃした話だ。作者の言葉には「コロンボ×ブルース・リー×ダークナイト」とある。警察小説であり、アクションあり、サイコさんでもあり、そして勿論本格ミステリでもある。
大まかにいうと倒叙形式により、ちょっと歪んだ精神の犯人による連続見立て殺人が描かれる、ということになるか。

純粋にミステリとして見ると、何気に凄い趣向。こんなことをやった作品は他に無いのでは。
うーん、ある程度踏み込まないと何も書けないな。
捜査側の人間が事件に後から加担し、発展させてしまう、というのは麻耶雄嵩もやっているのだけれど、ここではそれが物語の中心を占めている、というのがポイント。こういう風にすれば普通は悪徳警官ものになりそうなのだが、この作品ではあくまで本格ミステリの文法で描かれているのだ。
構成上、真の犯行方法が描写されたのち、偽の解決が説かれるという倒錯。そして、その偽ロジックが意外性に満ち、かつレベル高い。細かい伏線が秀逸であります。また、密室殺人のトリックが何種類も開陳されるはで、密度の濃さも間違いないところ。
自分で手掛かりを撒いておいて、それを自分で回収する。その様子は「探偵の操り」を自作自演でやっているようでもある。

だが、同時に凄く馬鹿馬鹿しい小説でもあって。色々と盛り込まれた要素が互いに相殺しているような気がしないでもない。
すさまじく力がこもっているのが伝わりすぎて困った。このコテコテ感が楽しめるかどうかはひとを選ぶでしょう。

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