1963年、牧師の息子・ドナルド・バードによる、ジャズにゴスペルの要素を大胆に取り入れた意欲作、ということなのだが。
制作背景や時代的なコンテキストから切り離して演奏に接してみると、これはクール目のソウルジャズ。デューク・ピアスンによるアレンジの元、バードをはじめハービー・ハンコックやケニー・バレル、ハンク・モブレイらがごく淡々とプレイしている、ように聴こえる。とくにハンコックのピアノが良いかな。
やはり音楽をユニークなものにしている男女8人からなる太いコーラスの存在。もっとも、少しラフではあるけれど、スキャットのフレージングは普通のジャズコーラスにおけるそれに近いもので。実際、メンバーは普段教会で歌っているひとたちではなく、音楽学校の生徒から多く選抜されていたそうである。
崇高さよりメランコリックさが勝ったような印象の歌声は、ときに昭和映画の挿入歌を思わせるようなフックを生み出しており、結果としてコマーシャルというのとは違う意味での大衆性を獲得することになっているように思う。
これらジャズのイディオムで再構築されたゴスペルは、物静かな都会の黒人たちに向けて鳴らされたのであろうか。新しい時代のための、歌詞の無いソウル・ミュージック。
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