2013-04-14

Paul and Linda McCartney / Ram


1971年にリリースされた二枚目のソロ・アルバム。ポールのソロではこれが一番好きだ、というひとは結構多いのではないかしら。頭からケツまでだれたり、趣味に走りすぎたりしない、見事なポップアルバム。前作「McCartney」の手作り感も良い塩梅に残してあるのが親しみ易さにも繋がっていると思います。

長年聴いてきて思うのは、このアルバムにおけるポール節ともいえそうなアレンジの凄さ。
アコースティックギターでドライヴ感を作った上で、瀟洒なポップソングとワイルドなロックンロールが無骨な手つきで接続されているのだけれど、唐突な曲展開や、思い付きじゃないの? というようなフレーズがズバズバ決まっていく。こう書くと他の英国モダンポップにもありそうなのだが、ポールの場合ずっと天然というか、変わったことをしてやろう的な狙った感がまるで無いのだ。

ブルース形式をしっかり守りながら絶妙なリズム感覚によってポップソングとなっている "3 Legs" やスキャット、4ビートまであってしかし全然ジャズではない "Heart Of The Country" などはポール・マッカートニーでしかありえない、という気がします。また、リンダと二人だけでレコーディングした "Ram On" も、ギリギリのバランスでプロの仕事として成り立っている、と思うな。
シングル曲の"Uncle Albert/Admiral Halsey"、あるいは "Dear Boy" や "Back Seat Of My Car" のようなドラマティックなものだけではなくて、ちょっとした、一見地味な曲もしっかり作りこまれているので、アルバムとして繰り返し聴けるものになっているのですね。

なお、モノラルミックスは落ち着いていて、まとまりが良いものではあるけれど、大胆不敵、余裕綽々なスケール感のある音像、という点においてステレオの方がずっと好みであります。



「Thrillington」は「Ram」のデラックス・エディションで初めて聴きました。リズムセクションは、クレム・カッティーニ、ハービー・フラワーズ、ヴィック・フリックら英国を代表する腕利きであり、コーラスを務めているのは我が国のソフトロックファンにも人気なマイク・サムズ・シンガーズ(彼らはビートルズの "Good Night" や "I Am The Walrus" にも参加している)なのだから良いに決まってるだろう、と思ったのだけど、期待していたほどでも無かった。上物の管弦がちょっと当たり前すぎるようだ。やはりあの型破りなアレンジがないと、曲の魅力は損なわれてしまうのだな。ちなみにアレンジャーのリチャード・ヒュースンは「Let It Be」の数曲にも関わったひとであります。
一般にカバーというのは原曲に遠慮してはいけないと思うのだが、本人が関わった以上しようが無いのかな。

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