2013-08-14

アガサ・クリスティー「杉の柩」


「エリノア・キャサリーン・カーライル。あなたは、去る七月二十七日に起こったメアリイ・ジェラード殺害容疑によって起訴されています。あなたは有罪を認めますか、無罪を申したてますか?」
恋人を奪った相手、メアリイを毒殺した容疑で告発されたエリノア。彼女以外には明らかな動機と機会を持ったものがいないのだ。更には、彼女に莫大な遺産を残して亡くなった叔母の死因にも疑いがかけられ・・・。

1940年のエルキュール・ポアロもの長編。
全体が三部構成になっていて、その第一部では事件が起こるまでがエリノアの心理を中心に描かれてます。ロマンス、叔母の病気、財産の相続、憎悪にまで至るメアリイへの激しい嫉妬。強い感情を持ちながら、表面上はいつも冷静にふるまうエリノア。彼女は確かに殺意を抱いたようである。更に、ところどころ思わせぶりな描写が入ることで、読者にも、エリノアはメアリイを殺していない、とは言い切れなくなってくる。
他にも女性キャラクターが描かれる割合が大きく、エリノアとメアリイの個性の対比もあって、昔の少女漫画のような雰囲気が濃密に感じられます。

3分の1くらい進んだところで殺人が起こり、ポアロの出馬となる。ここからが第二部、捜査編です。
事件の状況は極めて可能性が限定されているもののようである。はじめのうちは、果たしてこれでどうやってミステリを組み立てるのだろうと思わせられるのだが、些細な事柄を取り上げて、さまざまな可能性を示唆していくのが実に巧い。しかし、依然として容疑を覆すような線は浮かんでこない。

最後の第三部は法廷劇であります。エリノアに不利な事実がひとつひとつ事細かに挙げられていくのだが。

シビアに謎解きの面だけを取り上げると弱いですね。証拠の扱いなど、ちょっとこれは無いだろう。犯罪計画も無理が目立つ。
とはいえ、伏線は凄く周到。いや、伏線というよりプロットが重層化しているのか。
ドラマティックな展開も抜群です。

いかに見せるか/語るかの洗練による一作。面白かったわー。

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