作家アリスもの中短編4作を収録。
「アポロンのナイフ」
少年犯罪を扱った短編ですが、テーマがきちんとプロットの必然と繋がっているのが良いですね。ひとつの「ホワイ?」から事件の隠れた構図がするすると解かれていくスマートな仕上がりで、ミステリとしての主眼が見かけとは別のところにある、という構造はいつもながら巧い。
「雛人形を笑え」
若い漫才師の死を巡る人間ドラマの中編。これは「ホワイ?」を捻っていったらバカミスになりました、というような解決なのだが、この小ネタで90ページ持たせるのはしんどいし、作品のシリアスな雰囲気ともちぐはぐ。殺害状況の設定が生かしきれていない感も。
「探偵、青の時代」
火村准教授が学生時代に遭遇した事件。ちょっとした気付きによる、ちょっとした絵解き。
「菩提樹荘の殺人」
奇妙な殺害現場の謎を扱った中編であるけれど、本筋はオーソドックスなフーダニット。容疑者たちのアリバイを崩すのではなく、成立させていくという推理が面白い。また、その手掛かりも盲点を突いたユニークなものであります。
そこそこの手応えを感じる作品もありますが、全体として見るとやや小粒なのは否めないかなあ。シリーズをずっと読み続けている人以外には、お勧めしにくいですね。
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