2013-10-26
三津田信三「蛇棺葬」
三津田信三の作品にはホラーとミステリの要素が混じり合っているわけですが、この作品はホラー寄りのほう。
二部構成になっており、その前半は奈良の旧家である百巳家に移り住むことになった、妾腹の男児(どういうわけか下の名前で呼ばれることがありません)が経験するいくつもの怪異を、大人になってから回想の形で語る、という形をとっています。
得体の知れないものにどんどんと導かれてしまう、という描写はこの作者のものではお馴染みですが、中でも百巳の森で展開される異様な光景は幻想小説のようでなかなかいい。
後半は現在の話でしょうか、語り手(こちらでは美乃歩、と呼ばれています)は一旦は離れた百巳家を30年後になって再び訪れています。義母が亡くなりかけており、どうやら美乃歩は、かつて祖母が逝去したとき父が関わった(そして怪事件に巻き込まれた)のと同じ儀式を執り行わねばならないらしい。また、おかしなことに前半部で語られた少年時代の記憶にかなりの欠落があるようなのだ。
美乃歩は大人になっているからか、危なそうな場所には近づかないようにしているのだが、己の想念から生まれたものに囚われて再三、身動きが取れなくなりそうに。特に、河原の家での展開はちょっと京極夏彦テイストを感じさせるものながら、迫力があるものです。
そして、いよいよ問題の儀式が行なわれるのだが・・・。
一応、物語としては完結していますが、主人公が体験する恐怖については、あまりはっきりとした解釈がつけられないまま。また、ミステリ的な謎や、メタ趣向らしきものもあるのですが、こちらも保留といったところです。
わからないことはわからないとして理に落ちない分、ホラーとしては充分楽しめますが、やはり12月に文庫版が出るという続編『百蛇堂』と合わせて読むべきなのでしょう。
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