2013-10-14

ジャック・カーリイ「イン・ザ・ブラッド」


早朝からの釣りを楽しんでいたカーソン・ライダー刑事と相棒のハリーは、漂流するボートに乗せられた赤ん坊を救助することとなった。そしてボートが流されてきた元の場所を突き止めると、そこには腹に銛を突き刺された焼死体が。さらには赤ん坊が収容された病院も襲撃を受ける。
一方、教会キャンプでは異様な状態の死体が発見され・・・。

2年ぶりの邦訳になる、5作目です。
「ほんのキスひとつ隔てたところじゃないか。ローリング・ストーンズが言うように」
"Gimme Shelter" が最後の方で引用されているのだけれど、同名映画中で描かれた所謂「オルタモントの悲劇」を思わせる暴力的な白人集団の脅威が、作中モチーフのひとつになっています。また、この作品が本国で発表された頃に、ちょうどバラク・オバマが大統領に選出されており、その影響もあるかも。

ミステリとして見ると、400ページほどの分量に込められたプロットは複雑にしてタイト。ふたつの事件に加えて、謎のエピソードが平行して語られるのですが、ちょっとした繋がりらしきものが見え隠れしているので、興味が途切れないのがうまいところ。ページを繰る手を止めさせない、という点では今作は過去最高かも。
ただ、物語の凝縮度が増した分、手掛かりをひとつひとつ繋ぎ合せていくような推理の興趣が薄くなった感はあるか。カーソンとハリーが勘にまかせて、あちらこちらに動きまわるうちに事件は勝手に解決していくといった風。その辺りはスピード感でもって、うまく補われているのかな。

やたらに枝葉があるかに見えた物語を遺漏なく綺麗に収束させていく手腕と、先読みさせない真相は毎度のことながらお見事というしかない。犯人の設定はこれまでのパターンを踏まえているけれど、今回はさらにそこからもう一捻り。
新キャラクターの定着を期待させる結末も良いね。

これは細部までうまく構築された・・・何だろう?
読後感は謀略小説みたいなんだよな。凄く面白かったのは確かなのだが。

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