2013-10-05

アガサ・クリスティー「白昼の悪魔」


舞台は休暇の観光客で賑わうイギリスの小島。引退した女優、アリーナは男たちの関心を一身に集めることに満足していて、その周囲には嫉妬からくる憎しみが高まる。やがて避けようのない事件が起こるのだが、容疑者たちには強力なアリバイが。

1941年のエルキュール・ポアロもの、再読です。この辺りの内容はなんとなく覚えているな。一応はクローズドサークルものといってよいか。
基本的にはこれまでのクリスティの作風の洗練形にあると思います。プロットだけ取り出せばそれこそ何度も読んできたようなものですが、ミステリとして無駄が少ないのが特徴で、一見、枝葉のようなエピソードも後から謎解きに絡んでくるから油断できない。

解決編ではふいを突くような展開が待ち受けていて、思わず引き込まれますね。手掛かりの持つ意味はそのままで、背景となる事件の構図をずらしてしまうのだから。また、中心になっているトリックは、大胆な伏線も含めてチェスタトン的な発想と言えましょう。
犯人の設定は分かってみれば過去に使ったパターンなのですが、いかにもクリスティらしい強引な犯罪計画のせいで見えにくいものになっているようでもあるか。

いつもとさほど変わらない要素に少しのプラスアルファで、見事な効果があがっているようです。明晰なミステリ、という印象を持ちました。

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