2014-02-24
Nilsson / Nilsson Sings Newman
ニルソン、ランディー・ニューマンを唄う。1970年発表。
ニューマンの楽曲を作者の弾くピアノに乗せて唄う。ボーカルは多重録音され、小さくバスドラなどが聴こえる曲もありますが、基本構成は鍵盤と声のみ。個人的にはドラムの入っていない音楽はあまり好きではないのだが、こいつは例外。
ニルソン自身はそもそもソングライターとして世に出たわけだし、その曲の良さを知っているつもりではいるけれど、それでもニルソンのアルバムで一番好みなのは、この「Sings Newman」であります。他人の曲を演る、ということによってニルソン特有の韜晦趣味が抑えられていて、ときに層なす歌声はひたすらに優美だ。
収録されているどの曲も好きでありますが。あえてひとつ挙げるなら "Cowboy" になるか。
「かつて気ままに吹いていた風も/今はただ埃を巻き上げるだけ」
時代が変わったことで居場所がなくなり、かといって今更生き方を変えることもできないカウボーイ。
センチメンタルで、けれども乾いた空気が絶品。エンディングで聴けるハープシコードもなんとも儚げでたまらない。
また、このアルバムがCD化されたときにボーナストラックとして追加された "Snow" という曲、これも本編に劣らず素晴らしい。ニルソン以前にハーパーズ・ビザールとクロウディーン・ロンジェのヴァージョンで聴いていたのだけれど。いや、三者三様、どれもいいのだ。
ニルソンのものはアウトテイクだけあって、オーバーダブもないシンプルなものなのだが、他には何もいらないよな、と思わされる出来で、描かれた情景が鮮やかに立ち昇る。
これほど理性的でありながら、なおかつメランコリックな音楽を、僕は他に知らない。
もう春は目の前だというのに。
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