2014-03-23

E・C・R・ロラック「鐘楼の蝙蝠」


「死体をしょいこまされた場合、将来の不都合を避けるためには、どういうやり方で始末するのがいいだろうか?」
居心地の良い客間で行なわれた冗談半分の議論、だが、それは後に起こる犯罪を暗示するものであったのか。謎の脅迫者に付きまとわれていた作家は、突然に行方をくらました。また、同じ頃に外出した夫人も消息を絶つ。そして、脅迫者のアジトと思しい場所からは、ついに殺人の痕跡が発見された。

昨年に訳出された『悪魔と警視庁』と同様、マクドナルド警部が活躍する長編。発表されたのはこちらの方が先のようです。
『悪魔と警視庁』では最初に魅力的な謎が出されるものの、その興味が持続していかないという難点がありましたが、今作では不可解な手掛りが徐々に出されていき、事件が錯綜していく展開がうまくいっています。
派手な趣向も盛り込みつつ二転三転するプロットと、そのつど裏を読みたがるマクドナルドの推理も結構しつこく、これは愉しい。

ただ、やっぱり最後の謎解きがなあ、そんなに飛躍がないというか。トリックは肩透かしな上、伏線を出すのが余りに遅すぎるのでは。計画された犯罪としても、僥倖に恵まれすぎているような気がするし。

そういった物足りない点はあるのですが、控えめなユーモアを感じさせる会話は悪くないし、洒落たエンディングといい、う~ん、やはりこれはポスト黄金期の作品として鑑賞するのが良いのではないでしょうか。
『悪魔と警視庁』が楽しめなかったひとはやめといた方がいいかも。

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